家族がいるときは
3割以上が自分で準備
かつて親の介護、最期の看取り、葬儀や事後の処理は、すべて家族の役割でした。
しかしいまは状況が違ってきています。
家族がいない場合はもちろん、いる人も、葬儀や死後のことは自己責任で、生前から備えておこうという人が増えています。
家族はいても、離れて住んでいることも多く、いっしょに住んでいても「子どもに迷惑をかけたくない」と、考える人が多くなっているのです。
東京都生活文化局の調査報告でも、自分の葬儀のための準備をしている人が、35%近くいます。
生命保険に入ったり、葬儀費用を貯金したり、互助会に入ったりして備えているのがわかります。
家族に迷惑をかけたくないという思いと、家族はあてにできないという思いが交錯しているようです。
折にふれて家族と話し合っておく
しかし家族のいる人は、葬儀に関して、家族との対話がまるでないわけでもないでしょう。
家族に自分の葬儀の話をしているという人が40%以上います。
話せば子どもも、けっして聞く耳をもたないわけではないのです。
改まって話をする必要はありませんが、会話のなかで「自分はこんなふうに死を迎えたい」「こんな準備をしている」ということを、折々に家族に話しておくことは、けっしてむだではありません。
一人ひとりに「こんなふうに生きたい」という思いがあるように、「こんなふうに人生を締めくくりたい」という希望をもつのはごく自然なことです。
自分の希望を伝えておくことのメリッ卜は、家族が、自然に「希望に沿ったものにしてあげたい」という気持ちになれること。
また、いざというときに迷ったり悩んだりすることも少なくなります。
こちらの希望ばかりでなく「あなたたちはどう思う?」と家族の意向を聞くことも大事です。
こうした積み重ねが、結果的に、本人にとっても家族にも望ましい形の、満足できる葬儀ができることにつながります。
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子どもが遠く離れて住んでいるときは、まず手紙かメールで始めましょう。
プランは具体的に
「葬式はいらない、骨は海にまいてくれ・・・」こうしたあいまいな言い方では、家族は本気で聞いてはくれません。
実行可能なプランを立て、家族にきちんと《自分の意志》が伝わるように話しましょう。
自分の葬儀の準備としてチェックしたいのは、エンディングノートの項目と重なります。
最初は葬儀の準備から入り、そのほかにも、自分が認知症になった場合や、終末期の処置などについても、しっかり家族と話し合っておくといいでしょう。
ひとり暮らしのときは
元気なときはいいけれど
長寿社会になるにつれ、配偶者に先立たれた、ひとり暮らしの高齢者が増えています。
子どもはいても、遠く離れた土地にいたりして、ひとりで暮らす人もいます。
「いっしょに暮らしたくない」「迷惑をかけたくない」と、子どもと離れてひとり暮らしをする人も、じつは非常に多いのです。
加えて、昨今は独身の男女も多く、離婚件数も増加しています。
今後もひとりで暮らす人はますます増える傾向にあります。
元気なときのひとり暮らしはいいのですが、死が近づいたとき、人はだれかに死後のことを託さなければなりません。
人が死ぬことで生ずる死後処理は、想像以上に多いのです。
人はひとりで死ねるか
人は生まれるときもひとり、死ぬときもひとり……とよくいいますが、はたしてほんとうにひとりで死ねるのでしょうか。
これはどんな人にとっても、大きな、そして考えさせられる問題です。がんで亡くなったRさん(女性)のお話をしましょう。
生前、彼女がいちばん心配していたことは、「私は夫も子どももいないひとり身。身内や友人には迷惑かけずにひっそり死にたい。だけど、ひとり暮らしの私が死んだ
とき、葬儀やいろいろな手続きはどうなるのかしら?」ということでした。
①身内がだれもいないとき、葬儀はできるのだろうか。
②死亡診断書はだれがもらい、死亡届はだれが出すのだろうか。
③火葬に立ち合って、骨を拾い、遺骨を納めてくれる人はいるのだろうか。
④いま住んでいる賃貸住宅の返還手続きや片づけは、だれがしてくれるのだろうか。
⑤公共料金や、税金の支払いはだれがしてくれるのだろうか。
⑥入院していた病院の支払いやあと始末はだれにしてもらえばいいのだろうか。
このほかにも、不安に思う事柄はいろいろあったようです。
結局Rさんは、NPOりすシステムの公正証書による生前契約を結ぶことで、すべての不安を解決し、安心して旅立たれていきました。
Rさんの死後、契約は確実に実行され、Rさんはみごとな身辺整理をされたのです。
委託は公正証書で
ひとり暮らしの人は、終末期や死亡時、死亡後のことを、だれかに託さなければなりません。
何を、どのように、だれに委託するかは、元気なときに、契約や遺言を公正証書にしておくことで対応できます。
Aさんのように身寄りのない人でも、葬儀や、死後の諸手続きの代行サービスを行っている団体と生前に契約して、公正証書にしておくと安心です。
大事な書類を保管
万一のときを考えて、連絡先などは、部屋のわかりやすいところに貼っておきましょう。
財産目録や重要書類は、銀行の貸し金庫を利用し、その旨を代行サービスの人に連絡しておきます。
健康保険証などは、すぐわかるところに保管しておきます。
終末期の処置について
生前準備システムでは、任意後見契約や生前事務の契約も行っているところがあるので、必要ならば依頼するといいでしょう。
①どの病院でどの医師にどのような治療を受けたいか。
②病名・病状の告知をどうするか。
③任意後見人をだれに依頼するか。
④延命治療を望むか。
⑤臓器提供、献体の希望があるか。
⑥医療費の支払いはどうするか。
以上について、自分の意思をはっきり表明しておきます。
信頼できる友人に託すことも
親しい、信頼できる友人がいれば、死後を託すことができます。
葬儀は友人を施主にすれば、一般の葬祭業者でも請け負ってくれます。
自宅の片づけは、できるだけ生前、自分でして、あとは友人に託すとよいでしょう。
その場合、「負担つき遺贈」の遺言をするとよいでしょう。
負担つき遺贈というのは、「財産をあげる代わりに、○○と××をしてください」という条件つきで、財産を遺贈することです。
たとえば施主になって、通夜・葬儀をとり行ってもらい、死後の事務処理をお願いすることを条件に、遺産の一部を、その友人に贈与するのです。
約束どおりの葬儀をしてもらえた場合のみ、遺産が贈与されます。
生前の準備がない場合は
身寄りがなく、生前予約(契約)などもなされていないときは、自治体が遺体を火葬し、拾骨します。
遺骨の引き取りと財産処理のため、故人の相続人を探しますが、相続人がいなければ、財産管理人が、自治体から委託されて、すべてを処理します。
これには、たいへんな時間と費用がかかります。
延命治療の拒否を望むなら
いたずらな延命治療を行わず、人間の尊厳を保って死を迎えたいと願うときは、家族(生前契約の代理人)に伝え、書面にしておきます。
公正証書にしておくこともでき、日本尊厳死協会に委託する方法もあります。
臓器提供を望むなら
生前にドナーカード(市区町村役所、郵便局にあり)に意思表示をして、常に携帯していること。
運転免許証や保険証に貼るシールもあります。
家族がいれば、家族の同意が必要です
献体を望むなら
献体を望む本人が、生前に献体篤志団体や医科大学などに登録しておくことが必要です。
本人の死後、献体する前に遺族が通夜・葬儀をする時間もあります